有志によって結成された「地下鉄WEに乗ってみよう!の会」。 はじめての活動となる今日、地下鉄東西線の銀色の車体は、発車を楽しみに待つ会の人々で溢れていた。
「さぁ、まもなく荒井駅から出発ですよ!」
うきうきとした表情で参加者に声をかけて回る「乗ってみようの会」主催者。 自身も席につこうと腰をおろしかけたところで、何かがいつもと違っていることに気付いた。 次の目的地を示す電光掲示板の文字が、ぐにゃりと奇妙に歪んでいる。 耳障りな雑音の後、加工された不気味な声がアナウンスから響いた。
「楽しい試乗会はここまでです。たった今、この地下鉄は私のものになりました。」
一瞬の静寂の後、騒然とする車内。乗客が口々に疑問をこぼしながら、顔を見合わせる。
「どういうことかって? それはね、この車両を動かすも止めるも私次第ということです」
社内に響き渡る謎の人物の声。その声に呼応するように、車輪が音を立てて軋む。
「『止まらない東西線』にようこそ。ゲームの主役はみなさんです。
さぁ、世紀の大脱出劇を私に見せてください!期待してますよ…」
アナウンスもなく発車する車両。車両と乗客の運命は、謎の男が仕掛ける「ゲーム」に委ねられた。